校友・中村吉右衛門氏の芸の裏には、フランス文学への造詣が!
祖父初代吉右衛門の元へ養子に入ったいきさつや、幼少期の舞台裏での遊び場、在学した暁星小〜高の学友と始めたジャズバンド、大学ではカミュに魅せられて選択したフランス文学科、青年期の恋と歌舞伎役者としての葛藤、など数多くの思い出話をおおらかにお話くださった。なかでも、初舞台の演目の一つである駒若丸を演じるとき、普段はやさしくて大好きなご祖父様が立ち回りをして血だらけになるのが怖くて舞台前の化粧の時から収拾がつかなくなって代役をたてたお話や、もともと身体が弱かったのでめざしを食べる必要があると「朝晩“めざし”を食べさせて」くれ、身体が大きくなった青年期には「立ち回りが目立つのだから上手くなりなさい」と説き、高校卒業時には歌舞伎役者なら友人の層を広げ肥やしとしなさいと「早稲田大学入学を決心させられた」ばあや「たけさん」の思い出話は、次男坊らしいヤンチャさのなかに女性心を揺さぶるいい男の根幹を見た思いがした。私は、マイクス(マイク真木が率いたバンドである、年代が知れるところ。。。)のデビューシングルのB面の作詞が吉右衛門氏であることを知って以来の、そして鬼平犯科帳を毎回欠かすことなく見ている大ファンなので垂涎の1時間半だった。
|